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最高裁判所第三小法廷 平成4年(オ)364号 判決

上告人

株式会社エイチ・ビー プラニング

右代表者代表取締役

高橋保昌

右訴訟代理人弁護士

雨宮定直

吉田和彦

被上告人

北辰工業株式会社

右代表者代表取締役

北中克己

主文

原判決を破棄する。

被上告人の本訴請求中、損害賠償請求に関する部分を東京高等裁判所に差し戻す。

その余の部分につき被上告人の控訴を棄却する。

前項の部分に関する控訴費用及び上告費用は、被上告人の負担とする。

理由

上告代理人雨宮定直、同吉田和彦の上告理由第三点及び第四点について

一原審の確定した事実関係は、次のとおりである。

1  被上告人代表者は、原判決添付別紙本訴対象物件目録表示の目的機能及び構成を有する揺動圧入式掘削装置(以下「北辰式掘削装置」という。)と実質的に同一の掘削装置に関する発明について特許権を取得してこれを実施することを企図し、特許出願の準備を進めて、昭和四七年一〇月一四日、右出願をした(以下、右特許出願に係る発明を「本願発明」という。)。なお、本願発明の明細書の特許請求の範囲には、インゴットの取付け位置を限定する記載はなかった。

2  上告人と被上告人は、昭和四七年一月から四月までの間に、本願発明を実施した装置である北辰式掘削装置の製造を被上告人が上告人に発注し、上告人はこれを製造して被上告人に納入する旨の契約(以下「本件契約」という。)を口頭で締結した。その中で、被上告人は代表者において本願発明の特許出願を準備していたため、上告人はその製造した北辰式掘削装置を被上告人以外には納入販売しないという義務を負う旨の合意をした。

3  被上告人代表者は、本願発明の特許出願に関して拒絶理由が通知されたことから、昭和五二年一一月二一日、本願発明の明細書の特許請求の範囲につき、インゴットの取付け位置を限定する旨の補正をしたところ、昭和五四年一〇月一八日、右補正された内容で出願公告され、同五五年五月二〇日、設定登録された(以下、右特許を「本件特許」といい、右特許に係る発明を「本件発明」という。)。

二本訴は、上告人が製造して昭和五五年六月に他に販売した第一審判決添付別紙目録(一)記載の装置(以下「被告装置」という。)は、本件契約の対象である北辰式掘削装置に含まれるとして、被上告人が上告人に対し、北辰式掘削装置の製造販売等の差止めと損害賠償を請求するものである。

原審は、前記事実関係の下において、本件契約の対象は本願発明を実施した装置である北辰式掘削装置であるところ、被告装置は北辰式掘削装置に含まれるとした上で、本願発明につき、出願の過程で明細書の特許請求の範囲が補正された結果、特許請求の範囲が減縮された本件発明として設定登録され、これにより発明の内容が変動しても、右補正前に締結された本件契約の対象となる装置が変動することはないとして、被告装置が本件発明の技術的範囲に含まれるか否かを検討することなく、被上告人の請求を認容した。

三しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

原審の前記認定によれば、上告人はその製造した本願発明の実施に当たる装置を被上告人以外には納入販売しないとの義務を負っていたが、本願発明は、出願の過程で明細書の特許請求の範囲が補正された結果、特許請求の範囲が減縮された本件発明として設定登録されたというのである。そして、本願発明は掘削装置の構成に関するものであり、右装置が製造されて工事等に使用されたならば、これを現認した者は容易に発明の内容を知ることができるところ、右発明について特許出願をして独占権が与えられない限り、被上告人は他者の右発明の実施を阻止することができないことは明らかである。そうであるならば、特許出願準備中の本願発明を実施した装置を上告人に製造させる旨の本件契約は、本願発明につき特許出願がされて将来特許権として独占権が与えられることを前提として、このような発明としての本願発明の実施に当たる装置を対象として締結されたものと解すべきである。けだし、本件契約が、本願発明につき特許出願がされ将来特許権として独占権が与えられるか否かにかかわりなく締結されたとするならば、本件契約に基づいて北辰式掘削装置が製造販売され、本願発明を他者が知るところとなり、他者がその実施をすることが可能となるに至る技術的事項につき、契約当事者である上告人のみが実施を禁ぜられることになり、不合理であるといわざるを得ないからである。したがって、特段の事情の認められない本件においては、本願発明につき、出願の過程で明細書の特許請求の範囲が補正された結果、特許請求の範囲が減縮された場合には、これに伴って本件契約によって被上告人以外に納入販売しないという義務の対象となる装置もその範囲のものになると解するのが相当である。

これを要するに、本願発明がその出願の過程で変動しても本件契約の対象となる装置が変動することはないとした原審の説示には、契約に関する法令の解釈適用を誤る違法があるといわなくてはならない。

四そうすると、原判決には右の違法があり、これが原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そこで、後記の部分を除き、更に審理判断させるため、本件を原審に差し戻すのが相当である。なお、昭和五七年九月三〇日に本件特許を無効とする旨の審決があり、右審決の取消しを求める訴訟において請求棄却の判決がされ、右判決が平成二年四月一九日に確定したことは当裁判所に顕著であるから、被上告人の、北辰式掘削装置の製造販売等の差止めを求める部分は、被告装置が本件発明の技術的範囲に属するか否かにかかわらず棄却すべきであり、これと同旨の第一審判決は正当であって、被上告人の控訴は棄却すべきである。

よって、民訴法四〇七条一項、四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官園部逸夫 裁判官佐藤庄市郎 裁判官可部恒雄 裁判官大野正男)

上告代理人雨宮定直、同吉田和彦の上告理由

序論ないし第二点〈省略〉

第三点(拘束の範囲)

原判決は、契約の解釈を誤り、不作為義務の対象を広く認定し、本訴対象掘削装置であるとした点。

一、拘束力があるとされている本件契約は、口頭の約束であり、対象が極めてあいまいであるところ、

① そのような申込をしたのは被上告人であり、

② 原判決の認定によれば、それに対する被上告人の義務は、特に存せず、本件契約は、被上告人にのみ、一方的に義務を課すものであり、しかも、

③ 掘削装置の製造販売業者に、掘削装置の製造販売禁止義務を課すもの

であるから(それに対し被上告人は、ただのユーザーである。)、契約の対象ないし適用範囲を解釈するにあたっては、その範囲を可及的に狭く解すべきであり、あいまいな点があれば、対象から除くように解釈すべきである。

二、(一) 原判決は、契約の対象を認定するにあたり、若干の書証と被上告人代表者尋問の結果から、次の事実を認定している(五丁裏から七丁表にかけて)(便宜上番号をつける。)。

(1) 本件契約の対象物件はベノト式掘削機(ベノトボーリングマシン)と通称される掘削装置を改良したものであること、

(2) ベノト式掘削機とは、場所打ち杭をオールケーシング工法によって実現するものであって、先端にカッティングエッジを有するケーシングチューブを、上下動オイルジャッキによって縦方向の力を加えるとともに、揺動用のオイルジャッキで水平方向の左回り右回りの回転力を交互に加えつつ土中に捩じ込み、ケーシングチューブ内の土をハンマーグラブで掴み出して大口径の孔を形成した後、その孔に鉄筋を建て込み、コンクリートを流し込みながらケーシングチューブを引き抜くことによって所望の場所に基礎杭を形成する装置であること、

(3) しかしながらケーシングチューブを揺動しつつ圧入すると、掘削装置自体の後部が滑動横振れして掘削能力に限界が生ずること、

(4) そこで、控訴人(すなわち被上告人)代表者は、掘削装置本体の後方に孔を穿ちこれにアンカーを貫通して地面に打ち込むことにより掘削装置を固定してその滑動横振れを防止し、掘削能力を飛躍的に高めるという試みを創案したこと、

(5) そして控訴人(すなわち被上告人)代表者は、従来のベノト式掘削機がケーシングチューブの揺動圧入装置とハンマーグラブの作動装置、走行装置とを一体としていたため、装置が大型となり種々の不都合を生じていたことに鑑み、ケーシングチューブの揺動圧入装置のみを独立させ、これに前記のアンカーを組み合わせることにしたこと、

(6) 一方、ケーシングチューブを引き抜く(上告代理人注、「押し込む」の誤りである。)際には数一〇トンもの力で地盤を押すことになり掘削装置が浮き上がってしまうので、インゴットを適宜に配設して負荷を掛け、掘削装置の浮上を防止することは従来から慣用されていた技術であること、

(7) 控訴人(すなわち被上告人)代表者はその創案に係る右掘削装置の製造下請を被控訴人(すなわち上告人)に依頼したものであること。

そして、さらに、被上告人が申請した二人の証人の証言から次の事実を認定している。

(8) ベノト式掘削機において、ケーシングチューブを引き抜く(上告代理人注、「押し込む」の誤りである。)際の掘削機の浮上を防止するためにインゴットを適宜に配設することは従来から慣用されていた技術であること、

(9) ケーシングチューブを揺動圧入する際の掘削装置自体の後部の滑動横振れを防止するために掘削装置本体の後方にアンカーを貫通して地面に打ち込み固定することが控訴人代表者の創案に係る事項であって、本件契約の成立以前に行われた例がないこと。

そして、原判決は、そこから、たやすく、不作為義務を負う範囲につき、次のように認定している。

「そうすると、被控訴人(すなわち上告人)が不作為義務を負う範囲は、ベノト式掘削機からケーシングチューブの揺動圧入装置のみを独立させこれにアンカーを組み合わせたものであり、その構成は、別紙本訴対象物件目録の「二 構成の説明」記載の構成要件から成るアンカー付揺動圧入式掘削装置であって、同目録の「一 目的機能の説明」記載のとおり作動するものと理解することができる。」

(二) しかしながら、(認定事実に誤りがあるのを別論にしても)右のように、アンカーを極度に重要視した契約の解釈は、次に述べるとおり不当である。

1(1) アンカーを本体に設けることはなんら新規性進歩性のないものであること。掘削装置本体の後方にアンカーを貫通して地面に打ち込むことにより掘削装置を固定するという技術的思想には、新規性進歩性はない。

この点については、上告人が提出した〈書証番号略〉の「場所打ちぐい施工ハンドブック」の一〇四頁一五行ないし一〇五頁一四行に示されている技術を見れば明らかである。

(2) 原判決(八丁裏〜)は、この点につき、「前掲ハンドブックに示されているのは、ベノト式掘削機の後部の側面に接着して杭を打つ方法であって、控訴人代表者が創案したように掘削装置本体の後方にアンカーを貫通して地面に打ち込むことにより掘削装置を固定する方法ではないと理解される」(九丁裏)としているが、それについては、なんらの根拠が示されていない。同書の記載箇所には、「側面に接着」という限定はまったくなく、何故に、原判決がそのように決めつけたのか上告人は首をひねるばかりである。

(3) そして、原判決は、そのような誤った認定をした上、「ベノト式掘削機の後部の側面に接着して杭を打つことが技術的に可能であるとしても、その一面のみが掘削装置の後部の側面に接着し他の三面は掘削装置に接着しない杭と、掘削装置本体の後方を貫通して地面に打ち込まれたアンカーでは、掘削装置の後部の滑動横振れを防止する作用効果において異なるものがあると考えられるから、前掲ハンドブック記載の事項と控訴人代表者が創案した事項を、技術的に同一のものと理解することはできない。」という(九丁裏から一〇丁表)。

(4) しかし、原判決がいうように、アンカーは、装置全体が横に振れる(滑る)のを防ぐためのものであるなら(それはそのとおりである)、「掘削装置本体の後方を貫通して地面に打ち込まれたアンカー」であっても、横振れに対し、力が有効に働くのは杭の一面だけであるから(横振れがあった場合一時点においては杭には一方向からしか力がかからない。)、その作用効果は、「一面のみが掘削装置本体の後方を貫通して地面に打ち込まれたアンカー」と変わらない。

したがって、いずれにせよ、「掘削装置本体の後方にアンカーを貫通して打ち込むことにより掘削装置を固定するという技術的思想」は新規性・進歩性のないものといわざるをえないものである。

(5) 一言でいえば、「本体に杭を打って横振れを止める」などということは、土木作業実務者が現場の知恵として一般に行っていることであって、このような単純な発想に契約の対象か否かのポイントを置くことは、こじつけも甚だしいものと言わざるを得ない。

原判決は、「新規性を失わない」(一〇丁表八行))というところに、ポイントを置いており、一一丁裏最後の行から一五丁表九行までにおいても、縷々述べているが、要は、不作為義務の対象として合理的に解釈しうるほど技術的に進歩性があるかということを考察すべきであって、「今までなかった」(すなわち新規性がある)から、不作為義務の対象になるというような単純なものではない。今までそのような技術がなかったのは、ベノト式掘削機等自重が十分あるものであれば、横振れがしないので、横振れに対する対策を講じる必要がなかったというただそれだけのことである。

2 特許出願の経過

(1) 右の理は、特許出願の経過を見れば、よりはっきりする(一審判決三八頁以下は、文脈は異なるが参考になる。)。一審判決四二頁以下に認定されているとおり、補正の結果、特許出願の対象は「インゴットをチャック後方に、アンカーを基体の後方に、アンカーを基体の後方後尾に配置した構成」となり、発明の詳細な説明の項において、右のようにチャック、インゴット、アンカーを一列に配置することにより、装置を小型化し、壁際に接近し、また二つの壁によって形勢された隅角部の奥に突入することが可能となったとの作用効果に関する補正をして、発明内容を右のとおりに明確にし、意見書においても、そのように説明し、その結果、本件特許発明は特許されたものである。

(2) 以上の経過からみて、担当した出願代理人弁理士(引いては被上告人代表者)も特許庁も、アンカーの存在それ自体については、まったく重要視していなかったことによるものと解せざるを得ない。それは、右に説明したとおり、極めて自然な判断なのである。特許出願人においては、出願人は、新たに創造された技術的思想について、最大の広さの保護を求めて、ギリギリの努力を行う。しかし保護を求める広がりが過大であれば、出願人の求める保護の巾は、客観性を欠くことになり、拒けられる。かくして、本件における拘束合意の範囲が何かを客観的に解釈しようとする場合に、特許出願遂行における被上告人のこの行動を重要な意味を見い出すべきは理の当然である。一審判決には、やや説明不足のきらいはあったが、結論は妥当であった。原判決は、物事の自然な流れに目をそむけたものといわざるをえない。

3 (被上告人代表者の認識)

(1) 被上告人代表者の認識自身が、その「創案」したと主張している「北辰式装置」についてどのような認識をもっていたかは、本件契約成立後であり、特許出願前に発行された「建築技術」(昭和四七年一〇月一日発行)(〈書証番号略〉)を見れば明瞭に知れる。というのは、同記事は、被上告人代表者が売り込んで掲載されたものであるからである(詳細な同記事の内容を見れば被上告人側の積極的関与があったことは一見してわかる。)。

(2) その「建築技術」には、アンカーについての記述は一切ない。したがって、被上告人代表者自身も、アンカー自体には、さして重点おいてなかったのは疑いないところである。

4 以上見たとおり、アンカーそのものに進歩性はなく、また、上告人代表者はもちろん、被上告人代表者も、アンカーに技術的意味があるとは考えていなかったものである。一方的に被上告人代表者がアンカーに技術的意義があると、後になって思い込んだだけである。

5 仮に、被上告人が不作為の約束事に、アンカーに重点をおいた拘束を念頭において、上告人に拘束を求めたとしても、そのことが明示的に上告人に述べられていたわけではない。文書によるものでない以上単に、あの機械、とか、この機械、という言葉で示されていたはずである。

従って上告人が、被上告人が内心において認識していた内容の拘束を厳密に意識して被上告人の申入を請けた訳ではない。また被上告人のかかる内心の意思をもって、契約の客観的な解釈をすべき特段の事由は存しない。

従って、単に口頭の約束に過ぎない契約の対象を、アンカー付の掘削装置であるということに重きを置いて、解釈している原判決は極めて不当であり、破棄を免れない。契約の対象は、本点の冒頭に述べた事情をも加味して解釈すれば、当然、上告人が被上告人に納入したものとほぼ同一の構成のものに限られるというべきである。

第四点(拘束力の消滅)

契約の拘束力が存したとしても、上告人が第三者へ販売した時点では既にその拘束力は消滅しているのに、契約の解釈を誤り、存続していたと解釈している点。

一、(一) 仮に、第一点、第二点について、原判決の判断を前提として考えて、原判決添付の別紙本訴対象物件目録表示の掘削装置(以下「原判決添付装置」という。)が、契約上の不作為義務の対象であるとしても、そのような不作為義務はすでに消滅したと解すべきである。

(二) 以下に理由を述べるが、その前に指摘しておかなければならないことは、原判決の認定によれば、本件契約の成立は、昭和四七年四月以前であるところ(四丁裏最後の行から五丁表最初の行)、損害賠償の根拠とされている契約違反は、昭和五五年四月(あるいは六月)であり、差し止めが認められているのは平成三年であるということである。損害賠償ですら、契約後、八年以上経過しており、また、差し止めに至っては一九年以上もたっている。昭和四七年の口頭の約束に基づき、原判決のように、差し止めおよび損害賠償が認められることがいかに常識に反することであるかは、多言を要しない。以下の理由は、このような状況について、述べているものである。

二(一) 原判決が本件契約に拘束性を認めた積極的な理由は、先に引用したとおり、「控訴人代表者が特許権を取得しその実施をすることを企図していた掘削装置について、製造者に対し一定の不作為義務を負わせる約款が、法的な拘束力を有しないものとして契約当事者間で合意されていたということは到底考えられない。」(一一丁表)というところにある。

(二) しかし、話は全く逆の関係にある。契約に拘束力があるとすればその根拠は、被上告人が、競業者を上告人が製造した機械から遠ざけるために外ならないものであるから、特許の効力が出願公告によって(仮保護の権利という形で)発生した時に(仮保護の権利の内容は、特許権と実質的に同一である。)、不作為義務を負わせる契約は、その目的を達成して終了すると解するべきである。また拘束の必要性が、企業秘密の漏洩にもあるとしても、すでに機械自体は出願前に公然使用されているうえ、特許明細書に余すところなく記載され昭和四九年の出願公開により、開示されている。昭和四九年の出願公開により開示され、右のように解釈しない限りそのような契約は、合意解除等の特段の事情がない限り永久に続くことになる。

(三) 本件契約のように、掘削装置の製造販売業者に、その製品そのものの製造販売を禁止する(しかも一方的な)義務(原判決には、上告人が主張したような双方に義務があったという認定はされていない。)が、いつまでも続くというのはあまりに不当である。

契約の目的を考察すれば、また、出願の公開により公知になっている以上、出願公告すなわち仮保護の権利の時点で契約を終了したと解さざるをえない。原判決が一八丁表から裏の記述でなんら説示することなく、この点に関する上告人の主張を排斥したのは理解に苦しむ。

(四) 右に見たとおり、契約は、特許公告時に終了したと解すべきであるのに、契約の解釈を誤った原判決は、速やかに破棄されるべきである。

第五点(合意解約)ないし結語〈省略〉

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